帰り道






明け方の空が続く、まだコートを脱ぐには肌寒い季節の中を新一は一人歩く。


江戸川コナンから工藤新一に戻ってから一週間、彼は馴染みの警部やクラスメイトへの挨拶で忙しかった。
出席日数は何とか学校に無理を言って見逃してもらえたが(これもひとえに両親のおかげだといえる。教師陣はこぞって藤峰有紀子、工藤優作のファンであった)1年間も行方不明音信不通だったのだから、知り合いには一応顔を見せに挨拶しに行った方が良いだろうと、服部や博士の助言に従ってこうして歩き回っているのだ。
しかし、これもひとえに自分が探偵であるからなのか、挨拶をしに行った先々で事件が発生。その解決に勤しんでいたらこんなにも遅くなってしまった。



―・・・宮野のやつ、心配してるだろうな。



新一は家で未だ自分を待っていてくれているであろう少女(いや、もう女性と呼ぶべきだろう。自身がもう江戸川コナンではないのと同じように、彼女もまた、灰原哀ではないのだから)を想い、苦笑した。



現在午前四時。

普通ならどんなに待っていても寝てしまうような時間だ。でも、彼女は起きて待っているだろう。薬品の実験をしながら、トレードマークの白衣を着て、新一がただいまとドアを開けると同時に不機嫌そうな呆れた顔で皮肉と共に出迎えてくれるに違いない。



そんなことにすら喜んでいる自分が居て、もうどうしようもないなと、幸せと共に家のドアへと手をかけた。
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