「火黒ー、ごはんだってよー!」

夕暮れに鳴く、カラスの声を合図に、俺は声を張り上げた。
藍緋は、既に食卓を仕切る父さんの手伝いで、台所と居間を忙しく往復している。
いやー、女の子がいるといいね!あ、藍緋ちゃんは妖怪だけどさ、なんて喋りながら夕飯を作る父さんは楽しそうだ。藍緋も、少しぎこちないけど、でも、楽しそうで。何か、にやける。
藍緋は父さんが好きなんだな、と前に利守にこっそり耳打ちしたら、まるで信じられないものを見るかの様な目で俺を蔑んだ後、特大の溜息を吐いて、「藍緋さんかわいそう」と呟いて自室に消えた。
時音曰く、「好きな人の家族には誰だって好かれたいものよ」だってさ。よくわからん。

数時間前のやり取りを思い出していると、火黒がどこからか俺の前に現れた。
ごはんごはんとごきげんに鼻歌を口ずさみながらスキップするので、思わず笑ってしまう。おかしい。

俺と火黒が居間へ行くと、食卓には既に皆が集まっていて準備万端、いつでも食べれる状態で。
悪い、と謝りながら子供のように無邪気に俺の手を引っ張る火黒の隣に座り、いただきますと、みんなで手を合わせ、真っ白なご飯がよそられた茶碗に手を伸ばした。


もし


もしかしたら、の物語








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