「万事屋、か?」
夜も遅く、月が翳った路地裏。ふと蠢く影を視界の端に捉えた。咄嗟に構える身体、しかし、闇は静寂を保ったままだ。訝しげに、懐中電灯の明かりを向ける。光は、闇を切り裂き、その先にいた一人の人物を晒した。
(・・・・?もう一人、いたような気がしたんだが)
映し出されたのは、馴染み深い腐れ縁。何かというと事件に巻き込まれる(いや、巻き込んでる、のか?)万事屋の主人だった。
「こんなところで、なにをしている」
「え〜、多串くんはぁ、夜に散歩に行きたいな〜とか、思わないんですかぁ?」
飄々とした相手の言葉に、ぴん、と何かが引っかかった。
「散歩、ねぇ・・・こんな夜中に、餓鬼を置き去りにして?」
「たまには、銀さんだって一人になりたいときがあるんですぅ」
「・・・・女か」
「きゃー!野暮なことは聞かないで下さいっセクハラです誰か助けて!」
ふざけた野郎だ、と思う。にやにやと笑う顔が気に入らない。崩したくなるんだ。自分の内面に潜む凶暴性が、掻き立てられるようで、嫌だ。
土方は、その厳しさや言動から、気性の荒い人物であると周囲には認知されている。恐らく、この目の前の男も、そう思っている人間に一人だ。
確かに、土方はプライドが高く負けず嫌いで、立ちふさがるものには容赦はしない。しかし、それに反して、土方は自分を臆病な人間であると思っているし、実際にそうだと思う。
土方は、凪が好きだ。季節の花々、その蕾がたおやかに花開いていく、そういう、穏やかなものが好きだ。自分も、そうでありたいと思う。
あの人を守る盾となり、刃となることを望む一方で、彼を包む春でありたいなんて、そんな、叶わない願い。あの人は、それでも笑って、トシは刃でも盾でも春でもないよ俺の大切な仲間だよと、言ってくれるだろう。でも、だからこそ、あの人への思いは、穏やかで、優しくて、この世界の綺麗なものすべてを集めて凝縮したみたいなものであってほしいのだ。怖いものや汚いものは、一切いらない。やわらかいものだけでいい。土方は思う。そう思うのに。思えば思うほど、自分の中の獣が声を上げるのだ。崩して、めちゃくちゃにして、自分の物と刻み付けたくなる。それが、土方はひどく恐ろしくてしょうがない。
そして、この男を前にすると、まるで見えない獣が共鳴しているかのように、土方の砦をぐじゃぐじゃにする。
「・・・・・一応、職質かけとかねぇとな。で?どこの帰りだ」
「だからぁ、散歩だって。どっこもいってまっせーん」
「さっき一緒にいた奴は誰だ」
「・・・・・・・・・・・」
あまりにも、ふざけた面だから、かまをかけてやった。確かに、もう1人いたような気がしたけれど、ただの勘だ。近藤さん曰く、トシの勘は八割方は当たる、らしいが。
しかしながら、今回はビンゴだったようだ。さっきまで、飄々としていた奴の目が、一瞬鋭く煌いた。それはすぐに瞳の奥へと隠れてしまったが。
(なんか、触れたな)
多分、それは踏み込めない位置に占める誰か、だったのだろう。しかも、他人に知られたら拙い、誰か。そんな顔したら、一瞬でわかっちまう。もう少し、ポーカーフェイスを貫きな、この糖尿患者。
「・・・多串くんの、見間違いじゃない?」
「その反応だと、誰かいたな。誰だ?見られたら拙い、誰かってことはわかるが」
「はぁ、そんな肩張って疲れないかな多串くん」
「生憎、性分でな」
煙草に、そっと火をつけた。ゆらゆらと揺らめく炎が、まるで自分の様だと自嘲する。
「・・・・嘘つきー。ほんとは、私道端に咲く花の様に可憐になりたいのっとか思ってる乙女の癖に」
「なっ!だ、誰がそんなこと!」
「こ・れ」
ぺらぺらと万事屋が広げるのは・・・・
「〜〜〜〜っそれ!どこ、で!」
「あー、猫が咥えてた」
土方の、俳句集。中には、あの人への思いを詩にしたものも当然ながら含まれる。それを!あろうことか、この男に読まれただなんて!
「かえ、せっ」
「はいはいっと。いや〜、にしても、まさか多串くんが、そんなにロマンチストだったとは。いやはや、この坂田銀時、予想だにもしておりませんでしたよ、はい〜」
「へんな、真似は、やめ、ろっ」
恥ずかしさのあまり、顔が熱い。血が、煮えたぎっている。今なら、ダイヤモンドだって真っ二つに出来そうだ。
「じゃ、そういうことでばいば〜い。お互い、夢ってことで」
「お、おい!」
「なによ、まだなにかあるわけ?」
こちらに背を向けて、手を振る万事屋を、振り絞った声で呼び止める。
「その、咥えてた猫は・・・・」
「他人の俳句長の中身を見るほど野暮じゃねえよ、だってさ。片目の猫を見たら、とりあえずお礼でも言っといたら?」
「片目って、それ、」
「じゃ、おやすみ多串くん、いい夢を〜」
そう言って、彼は闇夜に消えていった。残されたのは、熱い顔を掌にある俳句帳。まるで、夏の夜の夢の様だった。





悲劇


(猫と獣にご用心)



リクエストの、高銀が夜散歩してたら、土方に遭遇〜でしたが・・・・なんか、あの、リクエストにあってないよ、ね。またしても!
最後は駆け足でした。もう、眠くて、何打ってるのかわからん・・・おかしかったらすいません
えっと、それから、もし、高銀←土を期待してたら重ね重ね申し訳ない!
ごめんなさい、私、土銀の人間でないので、どう絡めたらいいかわからなく・・・・結局、いつもの如く、土→近になってしまいました何それ!
ううう申し訳ありませんどげざ!
こ、これで勘弁してくださ、い






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