どうしたの?と隣人の少女に尋ねられた。

「どうしたの、そんな顔して。あなた、今の自分の顔、鏡で見たほうが良いわよ」

眉根を寄せて言われた言葉に、新一は、そんな酷い顔をしているだろうかと首を傾げる。
雨がザアザアとコンクリートを打つ音が妙に耳障りで仕方ない。水を吸い込んで重たくなった服も、髪から絶えず滴る雨粒も、無性に煩わしくてしょうがなかった。

「自覚してないんじゃあ、重症ね。ほら、いつまでもそんなとこにいないで、こっちにいらっしゃい。温かいココアでも淹れてあげるわ」

肩に柔らかく小さい手が重ねられて、腕をとられた。その様子を、新一はただ、ぼぉっと眺める。自分で立つことも出来ないの?と呆れられた様子で文句を言われてようやく、新一は雨に濡れるアスファルトに手を付き(自分の体温と同じような冷たさが少しおかしかった)立ち上がった。
少女の持つ傘では小さすぎて新一は入ることが出来ない。とはいっても、元からずぶ濡れで、傘に入ってもしょうがないのだけれど。

「・・・何があったか、聞かねぇのか?」

「あら、聞いて欲しかったの?」

俯きながら尋ねる新一に、少女は皮肉めいた顔つきで切り返す。彼女の、そんなわかりにくい優しさに、新一は泣きたくなった。
何があったか、と尋ねられていたら、きっと自分は此処で崩れ去ってしまっていたに違いないだろうから。
いや、と短く返答して、少女の小さな手を握り締めた。彼女の驚いている顔が視界に映る。表情は驚愕から、次第に紅潮した頬へと変化を見せていく。
その様が妙に愛おしくて、新一は少女の手から傘を振り払い、小さな身体を腕の中へと閉じ込めたのだった。












ほら、きみはいつだって、ぼくのさいこうのパートナー!


何だか知らないけれど打ちひしがれてる新一君と、新一君を支えてくれる哀ちゃん
哀ちゃんの不器用な愛情と、彼女の小さな手や優しさに無性に愛おしさが溢れて止まらない名探偵の関係が大好きです

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