ガヤガヤと皆がお喋りをしながら食事をしている食堂で、ユウリは一人コーヒーをトレイに乗せ、座るところは無いかと辺りを見回す。
が、いかんせん食事時であるセントラファエロの食堂にはユウリが座る椅子一つ分もなかった(正確に言うと空きはあるのだが、グループ同士で固まっているため、どうにも入りづらい)
いつもなら、シモンやパスカル達が固まって席を取ってくれている為困らないのだが、今日はユウリ一人だ。皆は、部屋で打ち合わせやら何やらで仕事に追われ、とてつもなく忙しいだろう。それに、今日はあまり他の人と接したくなかった。いや、ユウリとしてはみんなと一緒に居たいし、皆もそうだと思う。
しかし、今は駄目なのだ。今、自分と一緒にいれば、どんな災厄がその身に降りかかるかわからない。
誰にも言っていないが、今この瞬間、ユウリの自室には在籍中魔術師と称され、恐れ、敬われた、コリン・アシュレイがいるのだから。
彼は、ユウリが他の人間を気に掛けたり、関わったりするのをあまりよく思わない。機嫌を損ねると、大変なしっぺ返しを食らう。
それが自身へ向けられるだけならまだ平気だが、大切な人へ向けられるのだけは勘弁して欲しい。
シモンなら、気にせずに一緒にいてくれると思うが(勿論、他の仲間もだ)いかんせん、ユウリ自身がそれを良しとしない。もう、大切な人が傷つくのは嫌だった。
1年と少し前に起こった、霊廟でのヒューの死が唐突に脳裏に甦り、ユウリは思わず俯いてしまう。悲しみが、緩やかに足元から体染み渡っていくようで、涙が零れてしまいそうになる。
そんなユウリに「フォーダム!」と、奥から声がかかった。
ユウリは思わず、ビクと肩を揺らし、声の方へと顔を向ける。すると、その先には一学年下の最近仲良くなったエドモンド・オスカーが、手を振りながらよかったらこちらへどうぞ、と自分達の席へと招いてくれていた。
ユウリは一瞬考え込んで、食事だけならまぁ大丈夫だろうと、手招きするオスカーの右隣へ座る。

「ありがとう、オスカー。実はどこにも座れなくて困っていたんだ」

ユウリはオスカーと、その正面に座るセイヤーズ(以前より雰囲気が柔らかくなった気がする)やリッキーにごめんね、と一言謝りながら少し冷めてしまったコーヒーを口元へと運んだ

「いえ、役に立てて良かったですよ。ところでベルジュ達はどうしたんですか?いつも食事の時は一緒ですけど・・・」

そんなユウリに、気にしませんよとオスカーは軽く笑い、疑問を口にした。それはセイヤーズたちも疑問に思っていたようで、口には出さないが、どうかしたのか何かトラブルかと暗に探るような目をしている。
ユウリは3人の後輩に、別にいつも一緒というわけではないから、と言ったが3人ともいま一つ釈然としない様子で眉根を寄せてはいたが、一応は納得したようだった。

「そうだ、フォーダム、この後は暇ですか?」

唐突に場の雰囲気を和ませるかのように、リッキーがレアチーズケーキを口に運びながら訊ねた。
どうやら、親戚が日本に観光に行くらしく、何か良いところはないだろうかと聞きたかったようだ。ユウリは、くすり、と微笑んで、よく行く老舗旅館を推薦してみる。すると、日本の文化に興味があったのだろうか、オスカーやセイヤーズまでもが、ユウリの話に耳を傾け、夢中になって聞き惚れていた。
春夏秋冬、それぞれの季節の美しさや、侘しいという感情。しいては、桜の花に何を思い浮かべるかというう所まで話は発展していく。
どうも、西洋人である彼らには、日本人の考え方というのが非常に新鮮らしい。
いつか、行ってみたいですねとオスカーが零した言葉に、リッキーもセイヤーズも頷いていた。
やはり、自国を褒められるのは、ユウリにとっても嬉しい。じゃあ、3人が日本に来たら僕が案内するよ、と申し出ると、3人とも是非と笑って食後の紅茶を飲み干す。
楽しい、どこにでもある日常の欠片。それに埋没していたユウリは、いつの間にか、部屋に眠るアシュレイのことをすっかり忘れてしまっていた。多分、それがいけなかったんだ・・・ユウリは後になって思う。
だって、アシュレイは、ユウリがアシュレイ以外の人間に構うことを、一番良しとしないのだから―。







(あなたはいつだって傲慢で我侭でどうしようもなく愛おしい!)

英国の中途半端ss
折角なので晒してみた
・・・・・アシュレイは我侭な独占欲を丸出しにしてても可愛い
ユウリはそれを無意識に喜んでいるといい
でも、そこまで書けなかったorz

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