「よっしー、みーっけた!」




俺を指差しながら、まるで子供のように無邪気に声を上げる相手を見て、俺は思わず口に含んでいたコーヒー牛乳を盛大に友人の顔に噴出してしまった(何するんだ、無言で市々谷が俺を睨むがそんなのにかまっちゃいられない!)それもそうだろう、なにせ今、俺の前に現れた人物(いや、人ではないので人物とは言えないが)は絶対にこの場所にいちゃならない・・・っていうか、いないであって欲しい奴だったのだから。


「おーい、良?弁当、忘れてったから届けに来たんだけどー??」


父さんお手製の弁当(恐らく藍緋も少し手伝ったのだろう、朝2人して台所に篭っていたから)を片手に、ひらひらと俺の前まで来て手を振るっているのは、ついこの間まで敵対していた妖の内の1体である火黒だ。それが何で今、俺の弁当をわざわざ学校に届ける程の関係になったのかというと、ありえないことに(というか自分がそうしたので誰にも文句は言えないのだが)こいつともう1匹、藍緋という妖を俺は思わず助けてしまって、それからは家に居候として住み着いているのだ。以下省略。
と、諸々の事情により我が家は結界師という妖と戦う立場にありながら、妖を匿っている現在の状況に至るわけである。
当然、爺は猛反対。あの時は家が全壊するかと思った。普段の爺婆の戦いの数十倍は酷く、結局父さんの泣き落としと藍緋の妖退治への全面協力体制によって事なきを得た。ちなみに火黒は爺を怒らせるだけだった(本人曰く、ちょっとからかっただけなのに、だそうだ)




「・・・だからって、教室にまでわざわざ持って来るなよ・・・」


はぁ、と溜息をつきながら火黒を見るが、奴は、だって会いたかったし〜と笑うばかりで頭が痛い。しかも、周りの女子の声が煩いったらありゃしない。まぁ、火黒は見目がいいから(人皮だけど)しょうがないと思うが、この後の女子の行動が目に見えている俺としてはうんざりだ。どうせ、墨村くん!あの人誰?墨村くんのお兄さん??とかなんとか煩く聞いてくるに決まってる。その様が目に浮かんで、俺は今すぐ家に帰りたくなった。
それに、なんだか女子が火黒について騒ぐのが面白くない・・・気がする。胸の上辺りが妙にむかむかするのは、朝にコーヒー牛乳を調子に乗って3パックも飲み干したせいだろうか?
しぶしぶ、ありがとうと礼を言いながら火黒の手にある弁当を受け取る。
すると瞬間、ぐいっと腕ごと引っ張られて、気が付けば俺は火黒の腕の中だ。胸に顔を埋めて、あれ?まるでどっかの少女マンガのようじゃありませんかだなんて考えるほど、俺の脳髄は、いきなりの混乱にイカれてしまっていたらしい。


「俺以外に、無防備な姿は見せんなって」


ぼそり、と頭上から落下してきた少し拗ねた言葉に、俺は動揺しながらも何故だか嬉しくて堪らなかった。何故か、なんて理由は1つしかないかもしれないのだけれど、まだ知らないままでだっていいじゃないか。誰とも知れず、俺は言い訳を繰り返す。
ぎゅっと抱きしめられたまま、俺は弁当が落ちる音もクラスの喧騒もどこか遠い世界に追いやって、火黒の腕の中で少しの間、瞼を閉じながら儚い夢に身を委ねたのだった。



*Lunch time's Encounter*


大変なのは夢見た後の現実世界


この後学校サボって2人でデートしちゃうんですが
(っていうか火黒が良を攫って行っちゃう笑)
後日、良は質問攻めにあっちゃったり大変な目に
あとは藍緋の耳に入って、今度は藍緋が学校に来ちゃって大変な目にあったり
なんか、そんなはちゃめちゃなギャグが書きたいです(ぇ)



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